起業家として新たな道を進んでいる人に出会うと、その多くの人が、25〜30歳代でそのきっかけをつかんでいることに驚かされる。 いろいろな仕事を始めるきっかけはそれぞれ違っていても、チャンスの芽を自覚するのは、この年齢に集中している。組織での生き方をほぼマスターしたとき、自分自 身の人生そのものに気づくのかもしれない。
転勤、海外赴任、初めて組織を外からみる機会を得るのもこの時期。何となく先がみえる瞬間である。一念発起して、状況を打開していく人もいれば、いずれ、この組織から離れていく自分を認識する人もいる。そして、起業家としての精神に目覚める人も少なくない。
「組織にこのままいても、所詮自分の将来はこの程度かなってところがみえてきました。失望というよりは、力をつけたところで、自分の好きな仕事に集中したい。何かを始めたいと思いました。それが、50歳を間近にした頃に開花し、起業という暴挙に出てしまったのかもしれません」
こんなふうに、ある会社を始めたばかりの社長は語ってくれた。ある日思いつきで、会社を始めたのではなく、そのきっかけをたどっていくと、三○代前半の思いに突き当たったという話である。
おそらく、読者の大半は、起業するなど夢のような話と思うかもしれないが、実際、会社を興した人に出会うと、ごく普通の人のほうが多い。他の人と違っているのは、じっくりと自分の人生について考えてきたという事実である。
組織に所属し、ひたすら成績を上げることに没頭していると何もみえないものだが、ふと振り返り、先行きを眺めると、自分自身の将来像がみえてくるときがある。おそらく、このときの感覚はあたっている。組織に自分の姿がみえなければ、いつか転職、起業の道を選択するのだろうと漠然と考えておいて間違いはない。挫折ではなく、あるレベルに達すると、自分の先行きはみえるものである。そうなったら、一つ成長したと思えばよい。そして、次のステップとゴールの設定を行なう。
人生はこの繰り返しであり、キャリアメーキングも同じ周期で動いていく。いま、あなたの先には何がみえているか。三○歳を目前にしたとき、何が自分にみえるか。それが、自分のレベルなのである。他人に話すことではない、そっと先をみてみるとよい。