もう少し歳をとると、人生そのものを深く考えるようになる。50歳を過ぎたころだろうか。リストラ世代であるが、仕事を失うと何もなくなってしまうような事例を、悲壮感あふれる口調で語る人がいる。
もし、いまのポストを追われたら、人生そのものが終わってしまうようなことだ。本人は、いたってまじめなのであるが、その話を聞かされる側に立つと、煩わしい気分になる。
仕事以外に、楽しみはないのか。
ポストを追われるのは、本人にとって非常に不満の残ることかもしれない。おそらく、不満でいっぱいなのだろう。しかし、それが、周囲の冷静な判断による場合は、決して少なくない。そろそろ、引き時であることを、まわりが教えてくれたと素直に受け入れることも必要だ。
しかし、これで人生が終わったと考える必要もない。キャリアの終焉と悲嘆にくれる必要もないのである。新たなキャリアは、仕事以外の場面で創造できるものではないだろうか。人生は80年。おそらく、残りの人生をどう生きていくかが、問われている。
「仕事以外に、楽しみはありますか」
そう問われると、言葉に詰まってしまうサラリーマンがいかに多いか。最近、この傾向が顕著になっているように感じる。仕事以外に楽しいと感じられるものを作っておこう。熱中できるもの。何がしたいのか。仕事以外にもこのテーマを追いかけてほしい。
若い世代にしてみれば、仕事以外にやりたいことはいくらでもある。そんな声が聞こえてきそうだが、歳をとるにつれて、いくらでもあったはずのものが消えていく。三頭だての馬車を上手に走らせる話をしたが、自分自身の走り方を間違うと、他にやりたいことがみつからない状況に陥る。
仕事以外の趣味は、冗談じゃなく本当に大切なものである。いつも、大切にしたいもの。楽しめるものを継続しながら、歳をとってほしい。
仕事がなくなったら何も残らない。こんなことを平気でいえる人生は、決して充実したキャリアを積み重ねたことにはならないのである。
教えられてできることではないが、生き方そのものを問われていると心してかかろう。人生80年時代の生き方。キャリアメーキングにとって、永遠のテーマである。