実行力といっても闇雲に突っ走る人生の選択はばかげている。IT時代の到来によって、少なくともグローバリゼーションの世の中に自分を置くことは避けられない状況を迎えている。
外資系であろうが日本の企業であろうが、どこで働くにしても、グローバルな視点とIT技術を利用しないビジネスモデルは今後考えられなくなる。そのときに、自分自身を見失っているようでは、はなから相手にされない。自己実現を図るような人生を歩むこともおそらくできないのではないだろうか。
かつて、立花隆さんが、インタビューで次のように話していた。新世紀を語るというテーマのなかでの発言である。
「今世紀前半、理学的な知の爆発があった。それが後半の工学の大発展をもたらした。ホモサピエンス(理知の人)の知の爆発が、ホモファーベル(工作人)の技の爆発になり、ホモエコノミクス(経済人)の活動の爆発になっている。これが情報技術(IT)革命の本質です」
さらにこうした情報社会において、「いまどのような現実に直面し、どのようなリスクがあるのかをふまえた議論を行っていく必要がある。大事なのはリスク付きの決断を下す自党です。個人レベルでも社会レベルでも尚任をとれないリスクは絶対に避けるべきです」と、答えている。
みなさんは、今、非常に難しい時代に生きているのかもしれない。少しの判断ミスが、すぐに結果となって現れてくるくらいにスピード化が進んでいる。人生の選択についても、それほどの時間の余裕を持つことができない。時間をかけるには、フリーターのような一時避難の期間が必要になっているのが現実といえるだろう。
しかし、フリーターの期間をいくら過ごしたところで、自分自身の進むべき道を確実にとらえることは困難である。まして、すでに社会にこぎ出している大人が、フリーターの立場に戻って考えることなどできない。すでに、社会人であるという責任を担っているのだから、中途半端は通用しないのである。
「リスクある決断」をどのように責任を持って行うか。これから社会で生き抜いて行くには、それなりの覚悟が必要である。そして、その支えになるのは、組織の後ろ盾ではない。学歴も何の役にも立たないだろう。頼れるのは自分自身に他ならないのである。言葉では、いくらでも表現できるが、本当に、自分の人間力がものをいう時代であることを自覚しなければ何も始まらない。
IT時代に流されない自立の方法を、身につけることが必要である。パソコンの知識や謡学力といったものは、ビジネスを行うための手段に過ぎないのである。
情報化が進み、ますます人と人とのコミュニヶーション方法が変化していく時代にあって、真の人間力をつけることが本当に大切だと思う。
私の人生をあえて振り返って見ただけでも、人間力がものをいってきたとしかいいようがない。運がよいとよく話すが、その運さえも取り込んできた人間力が、少しは私自身に身についていたからこそ、何とかここまできたのではないだろうか。その私自身も新たな挑戦をやめれば、そこでストップしてしまう。私なりに、リスクを引き受けることに対する決断と責任を持たなければならない日々が続いている。