外資系企業の求める人材像を、「自立性」の観点から率直に語ったのは大竹氏だった。大蔵省の認可を得てアメリカンファミリー生命保険会社を始めて二四年(当時)、この間に大竹氏が人材を選ぶ際に重視したポイントが「自立性」の有無だったと語っている。
「自分は何をやりたいのか、何ができるのか、自分の目的と能力を把握して、責任を持って意志決定できる人間。これが自立性を持った人物というわけです」
大竹氏は仕事場で、「指示は一割しかしない、九割は自分で考えて行動してください」と語っているそうだ。
彼は、サラリーマン生活を一度も経験したことがない。この間、大竹氏は父から教わった言葉をただひたすらに実行してきたに過ぎないという。
その教えとは、「常に一人で物事を考えて、一人で行動せよ」というものだった。
極端な表現かもしれないが、これに徹することで独白性というものを生み出すことに成功したのである。変化の時代だからこそ、大胆な発想、大胆な行動が求められる。自分で物蛎を考えられるということがいかに大切であるか、大竹氏の言葉から理解できるはずである。
事実、大竹氏は生命保険会社の設立時、業界出身行は1、2名しか採用せずに、残りは異業種出身者ばかりを採用。野武士集団で業界の荒波を渡ってきた。
自立性にこだわる理由について、九八年六月号の『プレジデント」に掲救された大竹氏と外資系企業経営者協会の浜脇洋二会艮の対談におもしろい話が掲戦されている。
「自分の職を決めるのはいつか」というテーマに関して浜脇氏は、
「ドイツ人は国家試験である資枯試験にパスしたときだと多くの人が語っています。アメリカ人は、大学を卒業したときだそうです。そしてⅡ日本人は、会社に人って20年経っても決まらない」
と語った。大竹氏は、この話を引用して日本人の問題点の象徴だと指摘している。
「これまで日本人は、国家・企業に依存しすぎました。自立社会の必要性を痛感している次第です」
だからこそ、自立した人材が求められているのだというわけだ。こうした人材がなかなか育たないのは、学校教育に問題があるという指摘も同時に行っている。この件に関しては、私も大いに同感で、教育に関しては詳しく後述するつもりだ。
「自立」の心はなんとしても身につけたい。当たり前のことだが、親から独立して一人線らしを始め、経済的にも自立することが「自立」ではない。個の確立があって始めての「自立」である。