メンターとは「誠実な友、助言者」のことである。ギリシア神話のメントルの意味であるが、要するに職場、あるいは外でもかまわないが、あこがれの存在をみつけるということである。
すべてを自分一人で切り開かなければならないと、内にこもっていては、とてもキャリアを磨くことなどできない。視野を少し開いて、自分のまわりに模範となるような人物、さらには大きな目標、あこがれの存在をみつけることである。
私自身、振り返ってみると、幾人ものメンターを目標に頑張ってきた。中学生時代は、国語の先生があこがれで、読書指導を細かく受けたことを記憶している。読むべき本を指定していただき、その感想を述べることで、多くの知識を身につけることができた。
身近に指導者がいることは、非常に心強い。職場で、自分が尊敬し、指導を仰ぐことができる上司をみつけることも、必要ではないだろうか。
組織というものは、個人を枠にはめたがるものだ。できることを伸ばすよりも、できないことの指摘ばかりが繰り返される。「君には無理だ……」という言葉をかけられるたびに、萎縮してしまうものである。
そんな中で、自分の可能性を否定しないで、強く生きることは非常に難しい。誰か、師と仰げる人をみつけて、その人に追いついていくような時期があってもよいと思う。
尊敬し、信頼でき、そして親近感のもてる上司。キャリアアップに、身近なメンターをもつことは不可欠である。
さらに、大きな目標となるあこがれの存在も意識すべきである。私の場合、米国留学の年に暗殺されたケネディ大統領の印象が強い。多くの若者のあこがれであったが、私にとっても変わらなかった。彼の足跡をたどる旅を通して、いろいろと考える機会を得たように記憶している。
成功者であり、尊敬できる人物に出会えることは、自分を否定しないきっかけを与えてくれる。努力すれば、彼らに近づくことができるのではないだろうか。そんなふうに気持をもっていくことで、サラリーマン人生の中身は大きく違うはずだ。闇雲に仕事に取り組む時間が少し続いているとき、つまり、入社三年くらいたった段階で立ち止まって考えることも必要である。
まわりを見渡して、身近な目標の設定も、キャリアアップに欠かせない考え方の一つである。