松下村塾の人材育成方法は、ユニークな教育方法で知られている。吉田松陰は、学問というものは、実践に役立たなければならないという考えをもっていた。
『人材育成の進め方」(桐村晋次著・日経文庫)によると、松蔭は、歴史教育の場で、次のような方法で教育したことが書かれている。
具体的には、関ヶ原の地図のまわりに輪になって塾生を座らせ、合戦の場における各武将の動きを時間の経過とともに追いながら、「君ならどう判断するか、どういう意思決定を行なうか」と問いかけていた。一人ひとりに発言を求めることで、自分自身で考えることの重要性を体得させるために採用した方法である。解答を教える方法ではなく、自分で問題を発見し、答えを作り出す。入社三年を過ぎれば、この能力が大いに求められることになるだろう。
基本は、自己啓発であると自覚すること。すべては、この気づきから始まる。自分で考えるということは、自分自身の中にあらゆる気づきの要素を開花させることに他ならない。自分なりに、自己啓発のプログラムを構築してみよう。まず、基本的なプログラムの要素を列挙する。この中から、自分に必要なものは何かを考え、具体策の構築に進んでほしい。
①到達のゴールを設定する
②ゴールは短期的なものと長期的なものにする
③現在の自分の能力を判断する
④自己啓発目標の具体化作業
⑤実行するためのスケジュール
⑥実行のための手段や方法
⑦実行とフォローァップ
列挙してみると、すでにキャリァプランの構築方法として説明した事柄ばかりであるが、自らが進んで、こうした計画を立ててみることが必要である。組織人として三年も経過すれば、そろそろ自分の目標を具体化させることも可能である。ただし、計雲画を即実行するのは難しい。与えられた課題の中で、この自己啓発プログラムを意識して、できるところから始めていく。すぐに行動することで、必ず力はつくものだ。
入社三年目になれば、こうしたプランを自分の中に区切りをつける意味でも整理しておくこと。この段階を経て、はじめて次のステップに移ることができる。自分は、どのレベルにあるのか。再確認と再出発である。