「働いて」「自立」することが当たり前ではなくなってしまった時代に大学を出ても仕事に就かないフリーターの存在をみるたびに、時代の流れを痛切に感じる。キャリアメーキングのノウハウについて語るなど、一昔前であれば想像もできなかったことだ。しかし、こうした世の中を招いた根源に、大人が教えなくてはならないことを教えてこなかったつけがあると考えれば、大人の責任も痛感せざるをえない。自ずと、企業現場でも若手社員と中高年社員の役割分担が進んでいるようだ。
そこで、若手に求める最大の能力について、半ばお願いのような気持で、伝えたいことがある。自分を高く売るためには、何をおいてもコミュニケーション能力を高めてほしいということである。組織の中にあって、自分の存在価値を示す芸当は、なかなか難しい。しかし、コミュニケーションを円滑に進めることが、個人の能力を評価させるとすれば、誰にもその可能性は残されているのではないだろうか。
要するに、目上の人間と話ができる力を身につけて欲しい。何を伝えるにしても言葉のコミュニケーションは欠かせない。しかし、まったく、コミュニケーションが取れない人たちが多すぎるように感じる。すぐに、必要なことはメールでお伝えしますといわれるが、目の前に本人がいるならば、その場で話せばすむことだってたくさんあるだろう。
コミュニケーションをいかに取るか。その方法について少し考えてみよう。まず大きな声で挨拶をする。調子のいいやっといったイメージをもたれるかもしれないが、相手に悪い印象を与えるものではない。まずは挨拶をきちっとして、それから話を始める。上手に話をする必要はない。考えていることを率直に話すことを心がければよい。同時に、聞き上手になれ。目上の人の話をしっかりと聞いて、その内容についてコメントする。間違ってもかまわない。言葉のキャッチボールをする。
ためしに、父親と仕事の話をしてみよう。おそらく、そんな経験はなかったはずだが、身近にいる大人は父親である。彼と仕事の話がどれくらいできるか、ためしてみるとよいだろう。これができれば、コミュニケーションのきっかけは必ずつかめる。「あいつとは話にならない」……この印象をもたれると 能力はなかなか認められないものである。
いいやつだけどなかなか話せないといった 優しい反応は、組織の人間関係の中には存在しないことを覚えておこう。
キャリァメーキングのためには、自分を売り込む力も必要である。そのツールとして、コミュニケーション能力は欠かせない。
日頃から、他人との会話に工夫を凝らす。おもしろい話をするというよりは、会話がとぎれないための話術を、まずはマスター する努力をしてほしい。若いうちなら、恥をかいても恥ずかしくない。他人と交わる努力に真っ先に取り組むべきである。