バリューの把握といっても、これはなかなか難しい。私自身、時と場合によっては価値観を変更せざるをえないことに遭遇する。こう決めたから、ずっとこのままでいけるというものでもない。時と場合によっては、フレキシブルにその変更ができなければ、世の中も組織でも上手に生きていくことは難しくなる。
それでも、個人のバリューを把握することを勧めるのは、価値観ほど、他人に悟られやすい人物評価の基準はないからである。自分に自信がもてない人の大半は、この部分で、常にブレが生じる。他人のいったことにいつも言動をあわせてしまうようでは、個の存在をアピールすることはできない。
そこで、個人のバリューを最も端的に把握する方法を教えよう。まだ結婚していない人であっても、将来自分が子どもの親になるときはくるだろう。その機会がない場合でも、もし、自分に子どもがいたらどのように育てたいかを考えることは可能だ。
私は、個人の価値観は、子どもに伝えたい価値観として把握することが最も有効な自己分析法のように感じる。子育て真っ最中の若い人たちから、子どもについて意見を聞くと、その人たちの価値観を知ることができる。無目的に子どもと接している人もいれば、こだわりをもって子育てに取り組んでいる人もいる。
彼らが、子どもに何を伝えたいのかがわかると、その人の心情も理解できる。そこで、みなさんも子どもに何を伝えたいかをじっくり考えてみてほしい。そこで、伝えようとする事柄が、おそらくあなた自身の信条であり、価値観である。
子どもに、学ぶことの大切さを伝えるとき、何を目的に学ぶのかを説明するだろう。
偉くなるためか、お金持ちになるためか、人生を生き抜くためか、いろいろな言葉が浮かんでくるが、その考え方の根底に、個人のバリューは潜んでいる。
さらに、子どもの次に家族、国家というテーマに置き換えて、自分の考えを書き出してみると、いっそうバリューの本質はみえてくるだろう。そして、他人との関係性をどのように考えているか。仕事の仲間に何を求めるか、チームプレーに対してどのように考えるか。さらに、他人から自分の考え方はどのように評価されているか。いろいろな想定をもとに自己分析を実践してみよう。
個人のバリューが把握できれば、キャリアメーキングのスタートラインにようやく立つことができる。