今日の職場風景を思い浮かべてみるとき、10年前と大きく違っているのは、一人ひとりのデスクの上にパソコンが置かれていることである。その先は、世界につながっていると考えれば、グローバル化への対応が声高に強調されている現状を実感することができるだろう。
キャリァメーキングを実践していくためには、まず、組織の変化を肌で感じておく必要がある。国が変わろうとするのと同じくらい、組織にも変化のエネルギーが高まっている。組織が、この先どのように動いていくのかを理解することが、すなわち、個人の将来を見定める目安になる。
世界を相手に、同じ土俵の上で勝負しなければならなくなった日本企業は、そのために必要な体制づくりに追われている。バブル期についた無駄な賛肉を削ぎ落とし、フットワークの良さを取り戻そうとしている。
リストラによる、大幅な人員削減と並行して実施されている企業合併が、さらに顕著になる可能性は高い。日本企業は、かねてからメニー・カンパニーの状況(規模の小さい企業が過剰に存在)であると指摘されてきた。
米国のアナリストによれば、「トヨタ、ホンダは必要だけれど、三菱、マツダはいらない。日産は微妙なところか」といった分析が、当然のようになされている。大手スーパーの経営不振をみても、同業種がいかに多いか理解できる。大手銀行も、合併による組織の再構築を行なっているかそれでも金融機関かこれほど多く必要であるか疑問の残るところである。
合併の先に、さらなる淘汰が進むことになれば、リストラ・ショック以上の激震が、雇用の現場に降りかかってくることは間違いない。そのとき、あなたは、生き残ることができるのか。キャリアメーキングの必要性は、個の存在をいかに守るかという意味でも欠かせないことが、理解できるはずである。
さらに、注意深く観察しなければならないのは、アジア周辺国の動向である。WTO加盟の決まった中国は、日本から製造業の芽をすべてつみ取ってしまうくらいの攻勢を仕掛けてくる。技術力をもたない製造分野の淘汰は、加速度的に進むだろう。そのうえ、日本人の労働時間は減り続け、いまやアメリカ人よりも働いていない。付加価値の高いモノを生むしか、この国には残されていないのだ。
キャリアのことをゆっくり時間を掛けて考えている余裕は、ひょっとすると、もう残されていないのかもしれない。中高年サラリーマンだけが、リストラの影におびえる時期は過ぎた。若さが何の力にもならない時代が、いまの状況なのである。
注:この記事は2002年に書かれたもので経済や景気など各情報が現在と合わない箇所がありますが、メッセージ内容は現在もそのまま通じるものですので、あえて修正をしておりません。